「東北大震災」視察報告書
- 1. 議員団視察日程
- 2. 視察概要
- 2.1.1日目:仙台市内、石巻市内視察
- 2.2.2日目:岩手県宮古市、山田町視察
- 2.3.3日目:岩手県大槌町視察
- 3.京都市が東北に行うべき支援
- 3.1.支援物資の継続的支援
- 3.2.職員派遣
- 3.3.瓦礫受入
- 3.4.ボランティア、観光増進への呼びかけ
- 3.5.被災者の受入
- 4.京都で活かすべき項目
- 4.1.議員及び議会の役割
- 4.2.行政の役割
- 4.3.その他
- 人命救助と文化財救済でのジレンマ
- 文化財救済をどのタイミングで開始するかの判断が困難
- 文化財レスキュー事業の派遣側による費用負担
- 常駐スタッフの不足
- 災害復興への専門的心材の不足
- ボランティアが行える支援は限定的(適切な仕事を生み出せる人材、体制の不足)
- 行政の過度な公平性追求による支援の妨げ
- 時間経過による支援縮小
- 季節、土地柄に合わせた仮設住宅の設置が必要
- 物資の無支給が仮設住宅入居の妨げになる可能性あり
- 町長(トップ)不在による行政執行の遅れ
- 他の市町村に行政執行を補完できる仕組みがない(もしくは不足)
- 復興への継続的支援呼びかけ
- 支援体制の構築(募金、支援の行先や成果をいかに報告するか)
- 温かい食事の提供
- ≪役割分担例≫
- ・情報収集、状況分析
- ・行政執行への要望、監視
- ・現地ボランティア
1. 議員団視察日程
2011年6月14日(火)
6:00 | 佐々木議員の車で伊丹空港へ |
7:00 | 伊丹空港到着 |
8:00 | ANA1461仙台空港行き |
9:15 | 仙台空港到着 |
9:30 | 仙台空港(レンタカーで市内へ) |
10:00 | 海岸公園冒険広場(~10:30) |
13:00 | 仙台市博物館(~13:30) |
15:30 | 日和山(~16:00) |
19:00 | 花巻泊 |
2011年6月15日(水)
8:10 | JAL2181いわて花巻行き(村山) |
8:40 | 花巻出発 |
9:20 | 花巻空港到着 |
10:30 | 岩手県庁、地域政党いわて合流 |
12:30 | 山田町(現地視察) |
14:00 | 山田町出発 |
16:00 | 盛岡到着 |
17:00 | 地域政党いわて意見交換会 |
19:00 | 懇親会 |
2011年6月16日(木)
9:00 | 高橋県議同行ホテル出発 |
11:30 | 大槌町(町内視察) |
15:00 | 大槌町出発 |
15:00 | 大槌町内現地解散 |
17:00 | 花巻空港到着 |
18:30 | JAL2188伊丹空港行き |
20:00 | 伊丹空港到着 |
2. 視察概要
地域政党京都党市会議員団は6月14日から3日間の日程で東北地方太平洋沖大震災の被災地への視察・復興ボランティアを実施致しました。
1日目:仙台市内、石巻市内
2日目:岩手県宮古市、山田町(地域政党いわての方に同行して頂く)
3日目:岩手県大槌町(地域政党いわての方に同行して頂く)
2.1. 1日目:仙台市内、石巻市内視察
a)文化財レスキュー訪問
2011年6月17日、岩手県視察
文化財レスキュー事業スタッフへの視察
仙台市博物館にて文化財レスキュー事業の訪問。文化財レスキュー事業とは今後の建物の撤去などの際に、文化財の廃棄や散逸の防止を目的として、震災で被災した美術館、博物館、社寺、個人などの文化財を救出、応急処置をし、県内等の施設で一時保管を行っています。都道府県の要請を起点とし、文化庁が体制を構築します。2011年6月現在、宮城県が文化庁に支援を要請し、仙台市博物館に現地本部が設定されていまし。他県は要請を検討中とのこと。
課題
b)石巻市視察
被害を受けた石巻市
日和山より壊滅的な被害を受けた石巻市を望みました。沿岸部は瓦礫の山。沿岸部と内陸部では被害状況がまったく異なり、震災から3ヶ月が経過した時点でも未だに半壊したままの家や瓦礫が広がっていました。
課題
c)盗難被害
石巻市沿岸部に運ばれた数百台もの自動車
被災直後、被災地での物品の盗難が少なからず発生。震災から3ヶ月が経ち盗難被害はかなり落ち着いてきたが、自動車保管所では部品の無断持ち出しを防ぐため警備員を用意。現在石巻市だけでも自動車保管所が6箇所あり、視察した保管所では900台の車が運ばれていました。身分証明と車両証明、車が一致した場合により持ち出し可能。
2.2. 2日目:岩手県宮古市、山田町視察
a)支援物資の配給
宮古市の物資配給所にて
東北各県への物資の流通は回復しているものの、被災地への物資が著しく不足している状況。支援物資が被災地に届いても被災者に配布されない事例も目立ち、行政の公平性の観点より配布計画なしに物資を配給することができず、震災直後、全国から寄せられた物資が被災者に届くまでに4日を要した地域もありました。
この日の物資供給は、ボランティアの手によって行われていました。今も、こういった分野には行政の手が入りきらず、ボランティアに頼らざるを得ない状況が続いています。避難所等とあわせての課題ですが、現金がなく配給に頼らざるを得ない避難民の課題をどう処理して行くかが問われています。物資は、着実に充実してきています。
課題
b)避難所訪問
山田町の小学校体育館に設けられた避難所と大鎚の旧小学校全面に利用した避難所の2箇所を訪問。20~30名の方々が非難されており、共有スペースには洗濯物干し場、本やDVD,玩具、服などが積まれていました。食料を除けば、冬服など震災直後に必要として備品は一通り整っている模様。むしろ、物余り現象が始まっていました。
ただし、夏服や女性用下着など着まわしのできない衣服に関しては不足している状況。避難所生活者は、みてからに疲弊しているのが見て取れました。心のケアと一日も早いプラ
イバシーの確保が課題。衛生面では最低限保障されているが、精神面はかなりおおきな課題。また、食事は簡素。弁当中心で、油物が多く、苦情も多く聞きます。炊き出しはしばらく有効な支援手段。食糧事情の改善も喫緊の課題。
課題
c)仮設住宅
山田町の仮設住宅視察
寒冷地仕様になっていない仮設住宅が建設されているところが多数目立ちました。例えば、水道の止水栓が屋外に設置されているなど。また、避難所では食料等の物資が支給されるが、仮設住宅ではそういった支援物資がもらえないため、入居を避ける、または物置として使用することも少なくありません。また、仮設住宅に関しては、震災の際の協定により国交省主導で行い、建材を大手メーカーが買占め、独占的に設置するため、地元業者がしっかり仕事できないという問題もある模様でした。
課題
2.3. 3日目:岩手県大槌町視察
a)岩手県大槌町役場
町長、多くの職員が亡くなった大槌町役場
津波により壊滅的な被害を受けた役場内
高橋博之岩手県議の案内で大槌町を視察。大槌町は町長他、幹部職員の多くが津波により亡くなりました。選挙で選ばれた町長が亡くなり、意思決定に重大な支障をきたしました。副町長が職務代行をしていましたが、副町長も任期満了で6月から新任の総務課長が職務代行になったため、思い切った意思決定ができず、他の自治体と比べ圧倒的に遅れ、岩手県内で最も復興が遅れていました。
課題
b)ゆいっこ
ゆいっこHP
高橋博之岩手県議が代表を務める岩手の復興支援ボランティア団体「ゆいっこ」。高橋県議は現場主義で被災者の生活基盤を支えることを活動の中心としています。そのため、独自に現場の声を吸い上げながら必要な物資を届ける活動を続け、その延長戦で活動を支えてくれる方々とボランティア団体を結成。
復興から3ヶ月が経過した現在、課題となっているのは継続的支援の呼びかけです。被災地の復興は長期間にわたるため、被災直後の支援だけでなく、継続した支援が必要です。継続した支援のためには、募金や物資がどのような形で被災地に貢献しているかを支援者に報告することが大切と判断し、ゆいっこではブログ等で詳細に支援内容を報告しています。支援が被災者に貢献していることが目に見えると、次の支援につながります。この試みが一定の成果を挙げています。
課題
c)岩手県大槌町・安渡小学校の避難所訪問
訪問した日の避難所での昼食はおにぎり、ヨーグルト、お茶のみでした。市街地では商品の品揃えが問題なく整っているものの、各避難所に対して支給される食事等に関しては著しく不足していました。また、避難所にお風呂がないため、何日かごとの周期で協力してくれる旅館に温泉を利用させてもらう送迎バスの運行も市が行っていました。
課題
d)菜の花プロジェクト
菜の花プロジェクト視察、支援
津波が3キロ遡った大槌川で河川敷一面に菜の花を咲かせようとするプロジェクトが進んでいます。避難所では心的なストレス障害が大きな問題になり、共同生活もさることながら、先が見えない避難所生活、将来のライフプランの欠如によるストレス要因が大きいです。そのため、心的なストレス軽減を図るための取り組みとしても、こういった近隣住民がともに作業に取り組む菜の花プロジェクトの価値は大きいです。このプロジェクトは、大槌町の復興のシンボルとなる模様です。また、復興のシンボルつくりがはじまったということは、将に復興の兆しが見え始めたということです。一日も早い復興を願うばかりです。
3.京都市が東北に行うべき支援
3.1. 支援物資の継続的支援
集まった募金や物資をそれぞれどこに贈ったのかを京都市が把握できる範囲で提示していくことは大いに有効です。それぞれが行った支援の“見える化“は支援者側にとっての成果であり、継続的支援を呼びかける上でのカギとなる可能性があります。
3.2. 職員派遣
被災地には全国から多数の自治体職員が被災地支援のために派遣されています。京都市においても延べ1000人以上の職員が被災地に派遣され、罹災書発行や心理カウンセラーの職務に従事しています。
職員派遣は被災地への支援として実施されるが、一方で派遣された職員は被災地での行政を学ぶことが出来ます。被災地での支援経験は、京都市の有事の際に大いに役立つことから、大いに危機管理の観点からも支援従事者を増やさねばなりません。そのため、今後は被災地への職員派遣を「被災地のために」という視点だけでなく、「京都市のためにもなる」という視点でも設計していくべきです。
3.3. 瓦礫受入
政府からの瓦礫受け入れの打診の際に、京都市は年間5万トンの受け入れが可能と回答しました。しかしながら、この京都市の瓦礫の受け入れ表明後に、様々な団体から放射性物質を含んだ瓦礫の受け入れに反対の声が上がっています。岩手県、宮城県などの被災地には瓦礫が山のように積まれています。瓦礫処理は被災地復興の第一歩です。被災地だけでは瓦礫処理に限界があるため、被災地復興に向け、日本全体での瓦礫の受け入れが必要です。放射性物質を含んだ瓦礫の受け入れは厳に慎むべきですが、瓦礫が放射性物質を含んでいるか否かを冷静に見極め、瓦礫の受け入れを推進するべきです。
3.4. ボランティア、観光増進への呼びかけ
特に内地では、観光産業の大打撃や出張控えなど二次被害が頻出しています。出来るだけ京都でも観光促進を進めて行くべきです。被災地の地方自治体、また議員と提携するなどして、ボランティアの呼びかけをする。あるいは、一度ボランティアにご参加いただいた方には観光への呼び掛けも行い、復興支援に携わった街がどのように変化していくのかを実感してもらうツアーなどを立てるのも有効です。
3.5. 被災者の受入
4.京都で活かすべき項目
4.1. 議員及び議会の役割
a)陳情窓口の一本化(市会事務局を災害対策本部に)
岩手県議会でも震災初期は、通常ベースで陳情処理を行っていましたが、役所の混乱と対応が不可能だということで、陳情の一元化をいち早く進めてきました。災害時は、様々な陳情や問い合わせが殺到することが予測されます。災害時に各議員から様々な問い合わせを行うと混乱を助長させる懸念があるため、議員からの要望や陳情は議会事務局に窓口を一本化し情報を集約すべきです。被災者からの声を効率的に収集し、情報をスムーズに運ばせる必要があります。また、市会事務局を意見集約体として、取りまとめ、各会派から担当議員を選出し陳情を絞らせ、当局へ橋渡しをするような体系を作り上げておく必要があります。
b)議員による役割分担
京都市議全体、もしくは党ごとに役割分担を行い、効率的な運営の実現を目指すことが必要です。議会の役割は全く研究も進んでおらず、早い段階で検討を進めて行かねばなりません。大鎚では、高橋議員がアンケート用紙を各所から回収していましたが、地元住民のニーズの吸い上げを体系的に行っていたのは特徴的です。意見集約の形成も今のうちから検討を進めて行かねばなりません。
c)目に見える支援体制の構築
継続した支援を呼びかけるため、募金や物資がどのような形で被災地に貢献しているかを支援者に報告することが重要です。非常に手間のかかる試みではあるが、支援の拡大、継続を目指すためにも、被災者に貢献していることが目に見える体制づくりを行うべきです。
4.2. 行政の役割
a)文化財保護
地震等の広域災害に対し文化財救済を行う事業を検討。
b)物資運搬ルートの策定
c)物資配布計画
公平性と緊急性を踏まえた迅速かつ柔軟な対応を検討。
d)備蓄把握と再点検
ガソリン備蓄可能など。
e)防災対策の再点検
避難所の容量把握、災害種別ごとの対応把握など。
f)自主防災機能強化
g)京都府とも連携した復興体制の整備
被害の大きい地域の行政執行を補完できる体制づくり。
h)心的ストレスへの対応
相談員の派遣のみならず地元復興と併せて検討していくなど。
i)ボランティア受け入れ体制構築
j)緊急雇用対策
4.3. その他
a)役人及び議員の防災服
警察、消防に制服があるように、特に災害時は服装で立場を明確化する必要があります。被災地に足を運んだ際に真っ先に行政に関わる人間であることが分かるように、防災服を備えるべきです。この際、役人と議員の作業服を同系色にすることも効果的です。