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視察報告~岩手県震災がれき視察~

岩手県震災がれき視察

視察実施日:平成24年4月24日(火) ~ 4月25日(水)
視察目的:震災がれきの広域処理の必要性および安全性の調査
視察先:大槌町二次仮設処理現場、大槌町教育委員会、大槌町小中仮設校舎、 釜石市仮設住宅、
岩手県庁廃棄物特別対策室
視察参加者:村山議員、中島議員

●視察概要
大槌町
・大槌町の復興はまだまだ
・大槌病院もそのまま
・一次仮置き場は沿岸部に17ヶ所
・破砕・選別等の業務で震災がれきは再資源化と焼却等で分類
→被災による失業者の雇用は(最大100人/日)、現在85人

・岩手県内の災害廃棄物の量は約435万トン
・3年以内のがれき処理の完了を目標(阪神大震災を参考)
・3年以内のがれき処理には約53万トンの広域処理が必要

・震災がれきの被災者の心理負担が大きい。
・被災地はリアス式海外で陸地が少なく、貴重な平地(漁港含む)をがれきが埋める。
・沿岸部にがれきが集積し、漁業に支障をきたしている。
・大槌町のがれき処理現場の線量は0.07μSv/h。
・仮設焼却炉の建設費は20億円、ランニングコストは10億円。
・仮設焼却炉の1トンあたりのコスト(5万円)と東京での広域処理のコストは同じ。
・仮説焼却炉は場所の選定に時間がかかる。
・セメント工場でもがれきを処理。

●視察報告
東日本大震災では被災自治体では処理がしきれない膨大な災害廃棄物(以下、震災がれき)が発生した。岩手県は通常の約11年分、宮城県は約19年分の震災がれきが発生した。被災地の沿岸部の多くはリアス式海岸である。このため、沿岸部は山間部が多く、平面部が少ない。膨大に発生した震災がれきはこの貴重な平面部に積み上がっている。このため、主要な産業である漁業に深刻な打撃を与えている。

岩手県内の災害廃棄物の量は約435万トンである。この内、約253万トンがリサイクルされる。岩手県内で3年以内に処理可能な量は約125万トン。ゆえに、残りの約183万トンが3年以内で処理が完了できずに、広域処理を必要としている。

岩手県大槌町の震災がれきの処理現場を視察した。大槌町は職員136名の内、町長をはじめ幹部職員を中心に40名が震災で亡くなった。そのため、復興の意思決定が進まず、復興が最も遅れていると言われている。震災から1年以上が経過した今も町は荒廃した姿を残していた。

震災がれきはリサイクルを重視した処理フローで実施される。震災がれきは一次仮置場で粗選抜が実施後に、二次仮置き場に運搬。そこで破砕・選別を実施する。そして、焼却炉などに運搬され、最終処分をする。今回は二次仮置き場を視察した。


※ 「岩手県災害廃棄物処理詳細計画」より抜粋

二次仮置場の業務は特定業務共同企業体(JV)に委託されている。JVは竹中土木(本社:東京)、タケエイ(本社:東京)、松村建設(本社:大槌町)、八幡組(本社:大槌町)で構成をしている。大槌町内の17箇所の一次仮置場からがれきを二次仮置場に運搬し、がれきの破砕・選別を実施している。現在、85名を現地雇用。施設がフル稼働すれば約100名の現地雇用が可能となる。

(図1)震災から1年が経過しても復興が進んでいない大槌町内


(図2)大槌町内の仮設置場の位置図


(図3)二次仮設置場を視察


(図4)作業所長による二次仮設置場の説明


(図5)可燃系選別ゾーン


(図6)不燃系選別ゾーン


(図7)選別・破砕が完了した可燃系廃棄物


(図8)破砕されたがれきの空間線量を測定


(図9)0.07μSv/h


(図10)大槌町教育委員会を訪問


(図11)大槌町小中仮設校舎を訪問


(図12)釜石市の仮設住宅を視察


(図13)岩手県庁で災害廃棄物担当課長からの説明


大槌町の震災がれきの空間線量は、0.07μSv/h。京都市の過去の空間線量の平均が 0.033から0.087(現在の空間線量は0.04)であり、測定した震災がれきは福島原発事故の影響がないと言える。

岩手県庁で災害廃棄物担当課長から災害廃棄物の現況の説明を受けた。

Q. 災害廃棄物の現況は?

岩手県内の災害廃棄物の量は4,353,000トン、内処理が完了しているのは514,340トンであり、その進捗率は11.8%。大槌町の進捗率は2.8%である。太平洋セメントの大船渡工場でも処理を進めている。災害廃棄物はセメントの原料となる。1日1,000トンの処理を実現している。今後、政府もセメント工場での災害廃棄物も推進していくようである。
Q. 仮設焼却炉を増やすことで県内処理で完結できないか?

仮設焼却炉は場所の設置や環境調査などに時間を要する。沿岸部は土地が限られており、これ以上の仮設焼却炉の設置は難しい状況である。現在、宮古と釜石に設置している2基の焼却炉の一日あたりの処理能力は200トンである。県内の既存施設の処理能力は約1,400トンであり、広域処理で700トンを処理したい。

また仮設焼却炉の建設費は約20億円、ランニングコストは約10億円。仮設焼却炉で処理コストは1トンあたり約5万円であり、東京都の広域処理の処理コストとほぼ同額である。

Q. 震災がれきの放射性物質濃度は?

昨年8月に測定した県内の可燃物の推計結果は39.3から104 Bq/kgである。この値は検出下限値以下ので検出不可の値(ND)も検出下限値とみなして算出しているので、高めに検出されている可能性がある。東京都で広域処理されている宮古市の災害廃棄物から放射性物質は全く検出されていない。

●まとめ
震災がれきの処理は、そのスピードと地元経済への波及効果のバランスが重要である。震災がれきの安全性については、現地の放射能を正確に把握しながら、適正にその処理を検討すべきである。少なくとも視察をした大槌町の震災がれきの空間線量は0.07μSv/hであった。京都市の過去の空間線量の平均が 0.033から0.087(降雨時においては天然の放射能物質が降下するため値が上昇する)であり、測定した震災がれきは福島原発事故の影響がないと言える。

静岡県島田市は、東北地方と東京都以外で震災がれきをはじめて受け入れた。がれきの受け入れの検討中は、市内の自治会長らが市長や市議とともに大槌町のがれき処理現場を視察した。岩手日報の報道(2012年2月26日)によれば、ある自治会長は「空間線量率は島田市とほとんど変わらない。地元に戻りしっかり住民に説明したい」と語っている。

京都市会は2月議会において、自民、民主、公明、京都党、みんなの党・無所属の会の賛成で「東日本大震災で発生したがれきの受入れに関する決議」を可決している。被災地が広域処理を必要とするならば、がれきの安全性と市民への説明を十分に果たした上で、がれきを受け入れるべきである。

(文責:中島拓哉)

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