視察報告~旧西部クリーンセンター~
京都党市議団視察報告書
平成24年5月11日
報告者:京都党総務会長 江村理紗
先般、実施した京都党市議団研修について、次の通り報告致します。
研修実施日:平成24年5月8日(火曜日)10:00より
研修目的:昨年の五山送り火で使用されなかった岩手県陸前高田市の薪の保管状況を把握し、状況を確認したうえで今後の処分方法について検討する。
研修先:京都市の圧縮梱包施設(旧西部クリーンセンター 西京区沓掛)
研修参加者:村山議員、中島議員、江村議員
<五山送り火騒動について>
東日本大震災の津波に遭った岩手県陸前高田市の松で作った薪(まき)を「京都五山送り火」の大文字で燃やす計画が中止された問題。
<詳しい背景>
当初、平成23年度の「京都五山送り火」にて、震災で亡くなった家族や復興への思いを書いた薪を燃やす計画がなされていた。しかし、当時、セシウムを含む稲わらや牛肉等が問題になっていたため、京都市は大文字保存会に放射性物質が含まれていないか検査するよう指示。そこで検査を行ったところ、規定値を超える放射性物質は検出されなかった。
しかし、問題のない数値であったものの、大文字保存会に対して「もし何らかの影響があったらどうするのか」といった放射能への不安の声が殺到。大文字保存会内では、反対の声があろうとも燃やすべきであるとの主張も多かったが、あまりの批判に「そこまでのリスクを背負えるのか」と懸念する声も生まれた。また、大文字保存会に対し、最終判断を迫られる中で、京都市は突如「燃やしてよい」との前言を翻し、「市としての責任は持てない。」と通告した。結局、大文字保存会は苦渋のすえに、被災地の薪の使用を断念することを決定した。
その後、この中止の旨を発表すると、次は薪の受入に賛成していた市民から「なぜ一度受け入れた薪を燃やさないのか」という意見が多く寄せられた。しかしその時点ではすでに薪を岩手県陸前高田市に戻されており、すぐに現地で被災地の方の悲しみとともに燃やされた。この一連の流れは全国のニュースでも放映され、薪を差し戻した京都市の判断に不満の声が全国から届いたため、京都市は急遽、新たな薪を陸前高田市から再度受け入れることにした。しかし、2度目に受け入れた薪を検査すると、表皮から規定値を超える1,130ベクレルの放射性セシウムが検出された。そのため、安全性を確保できない薪を燃やすことは危険として、陸前高田市の薪は燃やされることなく計画は中止となった。
<現在の薪の状況と今後について>
「京都五山送り火」で燃やされるはずだった薪は、その後岩手に返されることなく、京都市西京区の圧縮梱包施設にて現在も保管されている。コンクリートブロック造りの旧機械室内でブルーシートの覆いの下に、10数本単位に小分けにした状態で二重のゴミ袋に入れられた状態は、一見過度に厳重とも思われる。しかし、ビニール袋で覆っているのは木くずが飛び散らないようにするためであり、放射性物質の飛散を懸念したものではない。実際に、保管の室内と屋外での放射線量は変わらないとのこと。薪の表皮は受入れ当時の1,130ベクレルに近い放射線量が出ているが、チップ状に裁断して、体積比で考えれば決して高い放射線量とは言えず身体への影響は極めて低い。
薪の処分方法は現在も決まっていない。風評被害を増大させてしまった京都市の責任を重く受け止め、放置することなくきんとしたけじめがこの残された薪の処分にも求められている。このまま放っておくわけにもいかないため、広域処理の試験焼却で一緒に燃やすことや、粒状に破砕してバイオ燃料としての利用、または慰霊祭等で使用することなども視野に入れながら処分を検討すべきである。