視察報告~福岡視察~
先般、実施した京都党市議団研修について、次の通り報告致します。
●視察日
平成25年1月31日(木)・2月1日(金)
●視察地
福岡市役所
福岡県留学生サポートセンター
●視察項目
福岡市(1日目)
アジアのリーダー都市ふくおか!プロジェクト事業、ごみ収集業務、税徴収業務の一元化の取組、オープントップバス事業について
福岡県(2日目)
留学生サポートセンター事業について
●研修参加者
村山祥栄、佐々木隆吏、中島拓哉、江村理紗
平成25年1月31日 福岡市視察
1.アジアのリーダー都市プロジェクト
【概要】
アジア都市福岡を目指すというキャッチフレーズで25年間歩み続けてきた福岡。
物理的に近いメリットをいかに活かすか。アジアのお手本となれるような都市にするにはどうすればいいのかということを市民参画で創りあげていこうというプロジェクト。
ちなみに「アジアのリーダー都市ふくおか」というのは現市長高島氏の政治的キャッチフレーズ。
【実施計画】
58人の有識者のインタビューを実施。市内外の有識者から見た福岡、目指すべき福岡を意見集約。11回のリレー形式でのフォーラム、市民アンケート、市民から論文公募(応募点数26点)、ワークショップ91回(市民版・職員版の二種、ワールドカフェ形式で実施。実施主体も市だけでなく地元団体や高校生など民間にお願いして大半を実施)、団体からの提言など様々な公聴を実施。まさに市民参画を本格的に実施した。
その後、審議会を設置し、これらをベースに基本構想、基本計画を現在作り直し、トータル一年半のスピーディーな取り組みの下、平成24年12月に完成した。
【視点】
●市民参画はこれまで結論ありきで、市民からも意見を聞いたという既成事実が重要視されている事が多いが、福岡がすごいのは、結論ありきでなく、ガチンコで市民の声を聞こうとしているところだ。通常「市民の皆様の声を聞いてまとめて反映させます。」というのが多いが、実態は結論ありきで聞いたふりをしているものが多い。福岡の場合、「採用するかは不明ですが、とりあえず意見を下さい。」というある種、無責任はスタンスで意見聴取しているのが、正直で本気なのが伝わってくる。したがって、却下された意見が圧倒的大多数だろうが、中に目の覚めるような提案がいくつも採用されているようである。
●有識者インタビューは、外郭団体に委託し作成(数百万程度、講師謝礼は規定に準じた金額90分で数千円)したが、大変有意義な資料集となっているようだ。今でも、政策づくりに大変役になっているようだ。これは、京都市でも実施する価値があるのでは?
【結論】
市民参画が叫ばれて久しいが、本気でやるなら、福岡は最良のお手本だと言えるだろう。
中途半端でなく、本気で市民の声を反映させるなら、意見をまとめるのではなく、聞きっぱなしでもいいので、とにかく意見を集めるというスタンスで望むのが望ましい。(文責:村山祥栄)
2.家庭ごみ収集業務
【概要】
●政令市唯一夜間収集を実施(日没~深夜0時)
●100%民間委託(直営収集をしたことがない)
●全戸戸別収集を実施
◇夜間収集について
ゴミが増えると共に収集時間が長くなり、交通量が少ない時間帯に実施することが効率的という判断で夜間収集を昭和36年ごろから実施される。深夜0時から収集が行われる。
【メリット】
昼間ゴミがない。
交通量が少なく、効率が良く、渋滞緩和にも役立つ
カラス被害が少ない。
夜間収集の際に夜間警戒を実施。防犯に寄与。
【デメリット】
収集時の騒音問題
分別意識の低下
深夜手当など夜間特有の費用が掛かる
【課題】
コストの差異は?夜間手当約6億、昼間にやるよりははるかに台数が少なくできる。
現実的に戸別収集は夜間しか不可能ではないか(当局談)
市民の反応は?⇒周辺都市も夜間収集なので違和感はほとんどない。但し、車両のプロペラを回すのは少し離れて回すなど配慮している。
◇クリーンセンターについて
深夜は、事業系の許可業者、一般廃棄物委託業者のみ入場出来る体制なので、計量作業しかないため、無人化。(2,3人しかいない)
一般持ち込みゴミは、昼間のみ対応。(こちらは料金徴収なども発生するため職員多い)
クリーンセンターはPFIで設置(九州電力と市が共同出資で設置し、発電もやっている)
また、クリーンセンターも民間委託している。
◇民間委託について
収集業者について(民間15社・外郭1社)
可燃ごみ14社(民間13社・外郭1社)
不燃ごみ3社(民間2社・外郭1社)
瓶ペット3社(民間2社・外郭1社)
コスト⇒可燃ごみ62億、びん・不燃各7億程度、 粗大5億円
トン当たりで言えば高くなっている。
【課題】
入札が高止まりしないか?⇒特定随意契約だが、原価計算方式で金額を算出
原価計算方式 職員の2割減の報酬(包括外部監査の指摘を受け見直し独自基準)、時間、
直接間接人件費、車両購入費など全て計算
かつて雇用対策で外郭団体が1社存在している(100%出資だが、職員は全てプロパー)
乗車体制は3人体制(但し、拠点収集をせず、全て戸別収集のため)
収集台数は可燃ごみ150台、不燃・瓶缶で60台。
不燃ごみ、瓶ペットボトルは月一回しか収集しないが、(スーパーなどで収集ボックスを設置)戸別収集なので出来る事。(文責:村山祥栄)
福岡市役所にて
3.徴税業務の一元化
【概要】
県と政令市等合同で捜索し税を徴収。平成19年度の国から地方への税源移譲に伴い地方税全体に占める個人住民税の割合が増加。同税の収入未済対策が重要課題となる。福岡県においても、県税全体の調停額に占める個人住民税の割合が増加。一方で、個人住民税の徴収業務が市町村において実施しているため、市町村との徴収連携を導入。滞納案件を市町村から県へ引継ぎ、県が滞納税を徴収。また、差し押さえ物件の合同公売会を実施。県と共催で10市町が参加。328品を公売し、254件が落札され、2,068,841円を滞納税金に充当。
【メリット】
市町村から県へ案件を引き継ぐことで、市町村は余力を他の滞納案件の整理促進に当てることが可。お互いの滞納整理の手法を共有し、徴収技術のスキルアップが可能。徴税担当者が市町村から県に変わることで、滞納者の納税意識が高まる。
【課題】
福岡市は、回収の見込みが相当低い案件の場合、県に案件を移譲せず、福岡市は特別滞納整理課が処理。また、市町村は徴税に意欲と誇りを持っており、徴税業務が県に移譲されると、市町村職員のモチベーションが低下する可能性もある。(文責:中島拓哉)
4.福岡オープントップバス
【概要】
福岡市の観光活性化を目的として平成24年春より運行を開始した2階建てオープントップバス(屋根のないバス)。
●ルート設定
昼間2コース・夕方~夜1コースの3コース。
①シーサイドももち・福岡城址コース(運行便数:4便、所要時間:約60分)
②ベイサイド・博多街なかコース(運行便数:4便、所要時間:約60分)
③福岡きらめき夜景コース(運行便数:2便、所要時間:約80分)
参考)福岡オープントップバスHPより(http://fukuokaopentopbus.jp/tours/)
●料金設定
大人…1500円、小人…750円
※チケットの提示で券面記載のコースと「福岡都心フリーエリア」の一般路線バスが1日乗り放題、福岡シティループバス「ぐりーん」1日乗り放題となる。
●観光案内
バスアナが1名乗車し、各観光スポットを案内。
◇運営主体
西日本鉄道(西鉄)
◇行政の補助
事業開始にあたって導入経費の約70%を福岡市が補助。
※補助基準として5年間以上運営をすることが条件。
導入以降は運営の経営状況に関わらず一切の補助を出さない。また、運営による収益は一切に福岡市には入らない。
◇利用者数と利用者属性
平成24年11月末現在で約55,000人が乗車。
(初年度の利用客目標年間5万人は平成24年11月2日に達成。)
来年度の利用者数見込みは正式には出していないが、おおよそ今年度と同規模を検討している。
・利用者構成…おとな:約85%、こども:約15%
・利用者の居住地…福岡県内:約50%(うち福岡市内:約30%)、九州内:約15%(福岡県除く)、九州外:約35%(うち外国人:約3%)
※リピーター数は未集計。
【課題】
利用者数は計画を上回り好調であるが、利用者属性では福岡県内が50%、九州内が全体65%を占め、外部からの利用が少ない。初年度以降の利用者数を伸ばすには、九州外や海外といった市場開拓を進める必要性がある。
【結論】
世界各国にはパリ、ロンドン、プサン、香港、上海とそれぞれ主要観光地をまわるオープントップバスを走らせている。京都市でも平成20年度に民間の旅行会社主体より「スカイバス」という名で屋根のないバスが運行されたが、短期的な運営で廃止された。
福岡市の事業は初年度ということでまだ将来性は定かではないか、主要観光地を効率用良くまわり街の雰囲気を感じ取るツールとしては利便性が高いため、今後他府県や海外へ知名度を上げれば、観光の一手段として今後広がる可能性がある。
京都市にオープントップバスを導入すれば、点在化しがちな市内の主要観光地を回れるツールとして非常に魅力的である。また、交通機関を利用して徒歩や自転車で市内観光を推奨する京都に、オープントップバスでまわるといった選択肢も広がる。しかし一方で、考慮すべき課題も山積している。
【導入への課題】
①道幅
道幅の狭い道路や交差点が多くオープントップバスが通れる道が限られる
②交通渋滞
観光シーズンの慢性的な渋滞はここ何年も課題を解決できない状況。また、狭い道路で交通渋滞を引き起こす可能性もある
③観光地の点在
市内の各地に主要観光地が点在するため、手軽な時間で主要箇所を盛り込んだコースをつくりにくい。市内の端に点在する観光地も多いため、市の中心部から向かうには時間配分が難しい。
④ライトアップ
主要観光地に寺社仏閣といった夜間のライトアップがない歴史的建造物も多いため、夜間運行の有効性は懐疑的である。
古い町並みが残っているからこそ生まれる課題も少なからず存在する。こういった課題を克服できれば、民間の協力企業を募って運行が見込めるのではないか。
豊富な観光資源に甘んじず、日本を誇る観光都市として、今後の観光ニーズの傾向に合わせた観光ツールも模索しながらオープントップバスの案も持っておくべきである。(文責:江村理紗)
平成25年2月1日視察
5.福岡県留学生サポートセンター
【概要】
大学、地域社会、産業界及び行政が一体となって福岡県内の留学生を支援する為に、平成20年4月に設立された。
背景にはアジアの玄関口である特色を生かし、多様で優れた人材の集積、育成、輩出が福岡県の発展には必要不可欠であるという認識がある。
【事業概要】
1.広報・リクルート事業
多言語によるWebサイトの運営、また福岡留学PRパンフレットを制作し、
国外・国内へ向けた広報活動を行う。
⇒留学生のリクルート事業においては、他国もリクルート活動をしており競争が激しい。福岡の知名度の低さも課題。ここで元留学生とのネットワークが口コミという形で生きてくる。
2.アルバイト紹介事業
留学生に対しアルバイトの紹介を無料で行なう。
⇒従来は飲食店や工場などの仕事が多かったが、最近では通訳補助など、留学生の特性を活かす仕事が増えてきている。
3.就職支援事業
日本企業へ就職を目指す留学生のために、
ビジネス日本語や就職活動に関するセミナー、企業と留学生の交流会などを行なう。
⇒中小企業は理系の学生を求める傾向にある。
4.交流促進事業
留学生のために家族代わりとなって、悩みを聞いたり、
ホームビジットを受け入れたりする家庭を紹介する。
⇒福岡県留学生会との連携により、留学生同士の交流と共に市民向けのイベントを開催。
5.生活相談事業
留学生の生活に関する相談窓口を設置する。
【所感】
私自身の留学経験と比較しても、非常に手厚いサポート体制が整備されているなというのが率直な感想です。もちろんこれらの支援は留学生にとって大きな支えとなるはずです。ただ、県内にある大学の講義が日本語で行われている限りは人材確保において、大きなハンデになることは間違いありません。こういったサポート体制の充実と同時に大学の国際化を図らなければ、政策目的を達成できないでしょう。京都においても講義の英語化を推進していかなければなりません。また、ポップカルチャーの発信にも力を入れられており、マンガミュージアムなどを有する京都においてもそういった資産の活用が求められます。(文責:佐々木たかし)
福岡県庁にて