代表質問 江村理紗議員(2017年2月議会)
右京区選出の江村理紗です。地域政党京都党市会議員団を代表して村山祥栄議員と共に市政一般について質問致します。
1.予算について
まず、平成29年度一般会計予算及び中期財政収支見通しについて質問致します。平成29年度一般会計予算の編成にあたり、昨年11月1日時点で「はばたけ未来へ!京プラン」の中期財政収支見通しから、109億円の予定であった財源不足が349億円まで拡大しました。この間、市債の発行抑制、人件費の削減や事務事業の見直し等が行われ、財源不足の縮小など厳しい財政状況の中、財政規律維持に向け尽力されたことは、今回の予算書にもその爪痕が多数見られ、一定評価しております。
一方で、京都党が指摘をしてきた公営住宅の適正管理や救急相談センターの整備、保育の充実、生活保護の適正化、バスの前乗り後ろ降り実証実験、証明書のコンビニ交付など幅広い観点で予算要望にも答えて頂きました。
しかし、消費税増税の延期や地方交付税の削減など、本市がコントロールできない部分での収入減があるとは言え、昨年に中期財政収支見通しが提示されてからわずか1年も経っていない状況で240億円の財源不足が新たに発生するのは、見通しの甘さを指摘せざるを得ません。今回、36億円増を見込んでいた市税収入は6億円の減の見込みとなったことを考えると、30年度以降は堅調に伸びるとされている市税収入も計画を下回る可能性は十分にありますし、地方交付税は年々削減されており、今後も更なる削減の恐れがあります。
概ね100億円程度と計画された「特別の財源対策」が京プラン始まって以来最大の147億円を計上し、平成30年以降も100億円を大きく超える計画に修正されております。京プランの後期最終年度の平成32年に突然「特別の財源対策」の金額が激減するのも、机上での数字合わせに感じてなりません。
そこで、市長にお尋ねします。今回、改めて提示された中期財政見通しの計画の実現可能性をどう捉えられているか、また、計画を下回り新たに財源不足が発生した際に、どのような対応をされるつもりかをお答えください。
2.市場の安心・安全について
次に市場の安心・安全について伺います。
豊洲では東京ガス工場跡による土壌汚染が大問題になっている中、昨年秋、「豊洲は東京ガスの工場跡地ですが、京都の中央市場は大阪ガスの工場跡地です。土壌の安全性は大丈夫なのでしょうか?」との声が私の元に寄せられました。現状、市民の間で一般的にガスタンクがあると認識しているのは五条七本松にある京都リサーチパークであり、そこでは“朱雀工場”として昭和38年まで石炭によるガス製造がなされていました。しかし、京都のガスの歴史を紐解くと、昭和3年操業開始の朱雀工場の他に、隣接して島原工場と呼ばれる場所が明治42年から存在しています。市民の一定世代以上の方には「確かにあそこはガス工場だった」と記憶されている方もおられました。取扱いは容易ではありませんが、それでも目を背けてはいけないものであるため調査を進めました。
■土地の過去
パネル①
土地の経緯を確かめると、現在、中央卸売市場青果1号棟のある中堂寺坊城町15番地1は昭和46年に京都市が所有するまで大阪ガスの土地でした。当時の市の議事録には、12億9,000万円で大阪ガス用地を購入と明記されています。購入時の番地は現在とは異なり、中堂寺坊城町23番地でした。大阪ガスは京都市に売却するまでの20年間この土地を所有していましたが、それ以前は京都ガス株式会社の土地でした。京都ガスは明治42年に取得しています。つまり、この土地は京都ガスから大阪ガスに引き継がれ、約60年間にわたってガス会社のものであったことが分かります。実際、地図には大正時代から現在の中央市場青果棟にあたる場所に「瓦斯會社」と書かれたものがあり、昭和に入ってからもアメリカ陸軍地図局の地図に「Gas Company」との表記や、中堂寺坊城町23に「大阪ガス京都工場」と書かれているものも存在します。
■この土地で何が行なわれていたのか
パネル②
では、京都ガス及び大阪ガスはこの土地で何をしていたのでしょうか。国土地理院の航空写真には、現在は中央市場が建っている場所を遡っていくと、なにやらガスタンクのようなものが映っています。
パネル③
大阪ガスの年史によれば、京都ガス株式会社は明治42年創立であり、その翌年には工場を開業。所在地は、下京区中堂寺坊城町23番地とあり、市が大阪ガスより取得した住所そのものです。無論、現在の青果1号棟に当たります。そして、年史には京都ガス島原工場と記録されています。
この島原工場では都市ガスの製造が行なわれており、開業時には、水平有底レトルトとガス溜が製造設備として設けられていました。この水平有底レトルトとは初期の都市ガスの製造設備であり、耐火煉瓦で造られた円筒型またはカマボコ型の炉を水平に配置し、石炭を投入して周囲から1000~1200度前後で加熱して石炭ガスを得るもので、最後にコークスが残ります。そもそも、当時の時代背景として、明治38年から大正9年に至る約16年間は、専ら水平レトルトによる石炭ガスの製造が行われていました。実際に、島原工場でも明治43年開業以来、水平有底レトルトを次々と増設しています。
パネル④
ちなみに、島原工場の南に当時存在していた島原遊郭を取り上げた映画には、ガス溜が映し出されていました。
したがって、京都ガス島原工場では石炭によるガス製造が行われていた可能性が極めて高いと言えます。これらの情報を組み合わせると、現在の青果一号棟は石炭ガス工場跡地ということになります。
■特定有害物質がある可能性と人体への影響
豊洲と同じく、石炭などを原料として都市ガスを製造する工程には、ベンゼン、シアン化合物などが発生し、石炭中に含まれる水銀、砒素、鉛、クロムなども副生され、工場敷地の土壌や地下水を汚染する可能性があります。
ベンゼンは発がん性があるほか、皮膚や粘膜を刺激し炎症を引き起こすこともあります。揮発性が高く、吸い込むと中枢神経に悪影響が及びます。シアン化合物は口や皮膚から体内に入ると、頭痛や目まいなどの中毒症状を引き起こし、濃度が高ければ呼吸困難で死亡することもあります。砒素は体内に入ると皮膚や感覚神経に異常が現れることがあります。
いずれも土壌汚染対策法に基づく基準値は何十年にもわたり摂取を続けて初めて影響があるものですが、数値が高くなればそれだけリスクも高まるものです。
これまでの経過が分かってきた段階で行政や議会として適切にどう対応できるかが市民にとって最も重要なことであります。
■市の見解
土壌汚染対策法は平成15年に制定されたものであり、中央卸売市場の青果棟部分はそれ以前に建てられたものであるため、これまでに土壌汚染調査を実施されたことはなく、その必要性について議論された経過もありません。市は、市場では地下水を利用されておらず、現状はコンクリートとアスファルトで覆っているので、法的には安全性に問題はないとし、加えて、土地改変時に必要とされれば土壌汚染調査を行うと過日の委員会で答弁されています。
■朱雀工場では基準値超え
しかし、島原工場と丹波口駅をまたいで同じく石炭ガスを製造していた京都ガス朱雀工場では、土壌汚染対策法ができてすぐの平成16年に大阪ガスが独自に土壌汚染調査を実施したところ、基準値を上回るベンゼンやシアン化合物、砒素が検出されました。土壌ガスからはベンゼンが最大76倍、表土の溶出量調査ではシアン化合物が最大100倍であったことが確認されています。
先般、京都市で実施した南部クリーンセンターでの土壌調査では、基準値を越える砒素などが検出され急遽追加に予算措置をして土壌汚染対策を講じているところですが、基準値超過は最大30倍です。朱雀工場跡地はそれよりさらに高濃度であります。
また、大阪ガスが自社のガス工場跡地を調査し、公表されている結果ではほとんどすべての工場で基準値を超える特定有害物質が検出されています。
■対策
①土地履歴調査と空気汚染調査
市は過日委員会で質問したところ、青果棟が大阪ガスの跡地であるものの、用途については把握していないとの答弁でした。航空写真や住宅地図を入手しているものの、昭和31年から41年までは大阪ガスの所有であったところまでしか遡れていないとの報告を受けています。
しかし、そもそも中央市場の再整備は3,000平方メートル以上の土地の形質変更となり、土壌汚染対策法が適用されるため、過去に大阪ガスが所有していたという事実を把握した時点で土地履歴調査は事前に実施しておくべきです。土地履歴調査は、過去の所有者や土地利用状況をできるだけ遡って調べることを意味します。この場所は再整備後、有効活用地となる計画ですが、公募する段階になって土壌調査が必要となり、そこから対策を打ち始めることになっては、再整備の計画に大きく支障をきたしかねません。
加えて、日本環境学会元会長で元大阪市立大学大学院教授の畑明郎氏によれば、土地履歴調査で石炭ガス工場跡地であることが判明した場合は、豊洲の地下空洞の例を出して、ベンゼン、シアン、水銀などがコンクリート床の割れ目や隙間から揮発している可能性があると指摘されています。そもそも昭和54年建設の青果棟は適宜コンクリートの補修を部分的になされているものの、コンクリートは10~20年で経年劣化が進みひび割れはできます。一度、建屋内の空気汚染調査を実施すべきです。もちろん法的義務はありませんが、市民の生鮮食料品を扱う卸売市場の安心と安全を守るためです。現状で空気汚染調査をしてベンゼンなどが検出された場合は、喚気したり、ガス抜きをする対策が必要です。
以上の点から、京都市は中央市場青果1号棟における土地履歴調査及び空気汚染調査を直ちに実施すべきと考えますが市長のご見解をお示しください。
②豊洲も法に則っているが京都市はどう考えるか
京都市は現状法的には問題なく、今後青果棟を再整備する際には必要に応じて土壌汚染調査を行い、適切な対応をすると言います。しかし問題なのは法律そのものにも欠陥があり、結果的に必ずしもその法に適合するからといって市民の安全に結びついているとは限らないということです。この国の環境行政は経済活動とのバランスによる妥協から、建て替えにより土壌を掘削するなどの土地の形質変更時しか土壌調査を必要としないことや、地下水を直接飲むなどの侵入経路の遮断を重視して、盛り土やコンクリート割れ目などからの揮発による大気汚染への対策がありません。その他、土壌汚染が疑われながらも調査猶予の取扱いが容易にできてしまうことなど、土壌汚染対策法の欠陥がかねてより専門家から指摘されているところです。
東京都の豊洲新市場は土壌汚染対策法に則っているものの、汚染問題が拭えない点があるために大騒ぎとなっています。結局その法の欠陥を埋めるのが、地方自治体の役割ではないでしょうか。
環境政策局であれば環境の保全として、市民の安心・安全の観点から見なければなりません。「土壌汚染があっても直接触れなければ良い」では、市民の環境も健康も守ることはできません。これまでも国の法律を自治体が条例で上乗せして補ってきたように、国の環境関連法に満足することなく向き合うことが本案件に求められているのではないでしょうか。
確かに法に則れば現時点での対策は不要ですが、京都市としてこの問題をどう考えるかを改めてお示しください。
市場が運営している現状では、土壌汚染調査で仮に汚染が分かっても、調査のために穴をあけた部分をまたコンクリートで覆うだけ、との認識を一部で伺いました。しかし、卸売市場の許認可権を有する農林水産省は、土壌汚染がありながら汚染が除去されていない「形質変更時要届出区域」について、「汚染の除去の措置を行わず、盛り土等のみを行なった上、区域指定を受けたまま土地利用をすることは可能」とする一方、但し、「生鮮食料品を取り扱う卸売市場用地の場合には想定し得ない」と付け加えられています。つまり、農水省の解釈では卸売市場の場合、コンクリートで覆う等では対策として不足である、ということです。
卸売市場法10条2項には、卸売市場の認可条件として、「生鮮食料品等の安全・衛生上適切な環境にある地域であること」が掲げられております。「食の安心や安全が確保」できるのか、「市場関係者や消費者の理解」が得られるのかということが重要なのです。過日、食の安全・安心への関心を市民に今まで以上に持っていただくことを願い、「食の安全・安心デー」が全会一致で採択されたことからも、なお一層、市場にとって食の安心・安全は最重要の課題です。
大所高所から市民の安心につながり、かつ環境行政をつかさどる立場から、適切かつ的確な対応をされることが市長にとってもより市民の信頼を得ることにつながります。
適宜対処をしたうえで、出た結果をきちんと公表し、安全であればそれにこしたことはなく、仮に汚染があったとしても万全な処置をして、市民が安心して利用することができる市場の環境整備を行うことを求め、私の質問と致します。
ご清聴ありがとうございました。