代表質問 森かれん議員(2020年9月議会)
上京区選出の森かれんです。私ごとでありますが、令和2年3月に次女を無事出産いたしました。妊娠・出産の際に格段のご配慮をいただきました議長、副議長を始め、お支えいただいた全ての皆様にこの場をお借りしまずもって御礼申し上げます。地域政党京都党市会議員団を代表し、神谷修平議員とともに質疑を行います。
まず令和元年度決算についてお尋ねします。平成30年度決算時には35億円積みあがっていた財政調整基金の残高はコロナ禍で経済に影響を与え始めた2月議会の時点ですでに、使い果たしています。その間の使い道も、21号台風での被災者住宅支援に使われた以外は職員給与の引き上げや地方交付税の減収補填など不足の事態でやむを得ずとは言い切れない活用であると言えます。京都党会派では常々特別の財源対策から脱却し、収入の範囲内での支出に抑えることや財政調整基金の積み立てを要望してきましたが、市長は「縮小一辺倒とならぬよう」と過剰な予算付けをして、事実上の赤字を繰り返し有事の備えである財政調整基金は積み立てできずにいます。さらに「財政調整基金が枯渇した状態で有事が起こったらどうするのか」という我が会派の質問に対し、「大規模災害が起こったとしても、その場合は国からの財政支援が得られる」と答弁されています。けれども、感染症という世界的有事を目の前にしたとき、京都市は市単独での財政出動がスムーズにできなかったという事態は重く受け止めるべきであります。この2つのグラフは政令市のコロナ対策による貯蓄とその使用状況であります。人口が197万人から109万人までの京都市人口とプラスマイナス40万人という同規模の政令市で比較しています。青色の棒グラフは令和2年5月31日時点での財政調整基金の残高、オレンジの棒グラフは令和2年4月以降に一般会計に繰り入れた金額を表しています。京都市は緊急事態宣言よりも前に枯渇している状況でありますが、多くの政令市で一定の貯蓄があることがわかります。京都市は貯金がなかったために7月の補正予算でようやく24億円の自主財源をねん出し、コロナ対策に10億円ほどの財源を投入しました。一方、国に先んじて100億円規模のテナント家賃保証を行った福岡市は、臨時交付金と財政調整基金を両方活用することによって4月時点で補償の発表、大型連休明けには募集開始とスピーディーに対応されました。福岡市は59億円の財政調整基金を一般会計に繰り入れてもまだ200億円近くの貯蓄が残っており、今後予想される市税収入減にも対応できるようになっています。このように財政調整基金を活用することで、独自に迅速なコロナ対策に踏み込めたことは大いに着目すべきところであります。その点、臨時交付金にしか頼ることのできなかった京都市は市民に対して財政面で大きな不安を与えただけでなく、財政調整基金をしっかり積み立てている都市とそうでない都市とでは有事の際の安心感という面において地域差が生じたと言えます。
市長にお尋ねします。今回の新型コロナウイルス感染拡大という世界的危機からご自身の都市経営を振り返ってみて、財政調整基金の重要性をより認識されたことと存じます。財政調整基金が枯渇していたことにより、十分な経済対策が出来ていないと思いますが、どのように評価されていますか?京都市民が未曾有の危機を迎えたとしても安心して生活や事業をしていくためには地に足の着いた計画的な積立をしていく必要があると思いますがご見解も併せてお聞かせください。
秋から冬にかけて、流行が予想されるインフルエンザと新型コロナウイルスの両方を対処していかなくてはならないという厳しい状況を迎えます。これまで多くの市民から京都市のこれまでの対応についてご不満の声が上がっていることを取り上げながら、今後の対策について2点提案いたします。
1つ目は感染拡大を徹底的に抑え込むために必要な検査体制強化についてです。検査体制強化については補正予算のたびに検査数を増加し、9月議会の補正予算においても派遣の保健師を増員し保健所の強化を図る提案がされています。京都市民が安心して生活できる、働ける環境づくりには欠かせないことでありますし、落ち込みの極めて厳しい京都観光の復活を成し遂げるためにも、保健所と検査体制の強化については常にアップグレードする必要があります。
検査体制の強化について、予算と人員を増やすという方法以外にも拡充や改善が出来ることがあるのではないかと考えられます。「濃厚接触者」と定義される方に対する検査については保健所でも可能な限り迅速に対応がされているとお伺いしています。しかし、濃厚接触者のご家族や同僚など同じ空間で社会生活、日常生活を送る人たちについても感染拡大を防ぐためにも可能な限り濃厚接触者と同様の対応が必要であると考えます。市内で感染が確認された方が通う施設に出入りする職員や保護者達についてはヒアリング等を踏まえ濃厚接触者か否かを保健所が判断することになっています。保育園を含む児童福祉施設については濃厚接触者だけでなくその施設に出入りをした保護者や園児に対しての対応がガイドラインで定められているものの、民間の事業者については基準があいまいであり、個々の事業経営者に判断がゆだねられている状況であります。その民間の事業者における、濃厚接触者でなく施設に出入りをした「濃厚接触が疑われる人」についても、すぐに検査が受けられる体制を整え、児童福祉施設などと同じように基準を設けるべきであると考えますがいかがでしょうか。加えて、感染拡大を防ぐという点においては現場で奮闘いただいている保健師の業務仕分けとサポートを行うことも必要です。「保健師の資格や知識がなければ対応が難しい業務」と「専門知識ができなくともできる業務」とに分けて外部委託も含め人員の配置を行っていただくことにより、保健師の負担軽減と濃厚接触者の特定と濃厚接触者への検査をいち早く行うことができる体制を作っていただくことも併せて求めます。
2つ目は経済対策の一環で行われた各種補助金についてです。京都市は市独自の支援事業をいくつも展開してきていることについては評価すべきところでありますが、中には募集期間の途中で予算に到達したために一時打ち切りにしたものもあります。今回の9月補正で追加の予算を投入することになっていますが、中小企業等IT利活用支援事業については、当初発表した応募期間よりも前に打ち切らなければならない事態となっています。京都市に助けを求める方々が殺到している中で補助を打ち切るということが信頼失墜につながるだけでなく、必要な人に正確に支援を届けるという行政サービスの精神に反し、市民に不公平感を与える結果となります。補助を行う事業に対して的確な需要予測を立て、その結果に裏打ちされた財源確保が出来ていたかは疑問が残ります。今後は、需要予測と財源確保をしっかり行った上で、限りある予算の中で優先順位を付けること、そして可能な限り公正公平な支援を行っていただくことを強く求めます。
そこで、市長に2点お尋ねします。2月から今までの半年間の京都市の取り組みを振り返りどんな教訓があったのか、まず一つは医療検査体制を今後どのように拡充させていくのか。2つ目は、各種補助金に関しては課題が多いと感じます。今後どのように改善を図っていくのかお答えください。
次に行政手続きのオンライン化についてお尋ねいたします。私は以前から子育てに関する行政手続きの電子申拡充を代表質問の場でも申し上げてきましたが、新型コロナウイルス感染症防止の観点からも、混んでいる区役所にいかずとも、手続きや申請ができるようになってほしいという声はより一層高まっています。京都市においても、平成31年1月からマイナンバーカードによる証明書のコンビニ交付が実施されるようになりました。スマートフォンの普及やキャッシュレス化社会の促進により、行政サービスについても「区役所に行けば全ての行政手続きが完了する」というワンストップの考え方すら古くなり、「自宅からマイナンバーカードとスマートフォンを全ての手続きが完了する」というゼロストップになろうとしています。これまでには考えられなかった「人と人との接触を可能な限り避ける」という新しい生活様式の定着によって区役所の在り方や行政サービス、業務のさらなる効率化についても見直す時期が来ているのではないかと考えられます。
平成28年12月に施行された「官民データ活用推進基本法」では、行政手続きに係るオンライン利用の原則化が定められていることからも、申請から手続き完了までオンラインで完結することは近未来的発想ではなくすでにすぐそこに来ている現実であるととらえる必要があります。9月16日に菅内閣が発足し、その目玉の一つに「デジタル庁」があげられます。これまでペーパレスやオンライン化については省庁ごとにばらばらに取り組んでいたものをデジタル庁に一本化し、一気に推進すると報道されています。このような国の動きは歓迎されるものであると考えておりますし、地方自治体も国の動きを注視しながらも、今できることを整理し直ちに取り組む必要があると考えます。自治体の業務自体が紙ベースであることやそもそも業務の標準化が進んでいない結果すぐに移行できないのが実態です。まずオンライン化に向け、業務フローを再点検し、標準化や書類の電子化も含め取り組んでいただく必要があります。さらに、その作業を一部署で集中するのではなく、全庁横断的な組織を体制づくりも検討されるべきであると考えます。まずは、国で進めている行政手続きのオンライン化について、京都市でもワンストップではなく、「申請手続きが全てオンラインで完了する」というゼロストップでできるよう、導入検討を進めていただくことを求めます。
次に行政サービスオンライン化に伴う行政区のあり方についてお尋ねします。京都市は現在11区の行政区に分け、行政区に設置することとなっている市の事務所として11区役所、3支所、14出張所を設置し市民に身近な業務が行われています。区役所等にどのような機能・組織を持たせるのかは市の裁量で決定できるため、これまでにも行政内部での検討により、適宜見直しが進められてきました。今後オンラインでの申請が普及していけば、市民にとって区役所とは、証明書発行や手続きをする場所ではなく市民生活を快適にかつ安全に行う上での相談や問題解決の最も身近な窓口の役割が大きくなると考えます。また区役所職員は、インターネットやパソコンの取り扱いに慣れていない区民の皆様への支援など直接的なコミュニケーションが求められます。そのため日々多様化する行政ニーズに対応し、市民と職員のコミュニケーションをより充実させていくことが重要になります。オンライン化の推進は人でなくてもできる作業から解放されるということではありますが、業務効率が上がることは、必ずしも人減らしではありません。これまで人でなくてもできる作業から解放することによって、よりクリエイティブな仕事に職員が取り組めることであり、そのことによって住民サービス向上が期待できるということであります。例えば、これまで事務作業や定型業務に従事していた職員をこれまでは手が回っていなかった業務に従事することもできます。福祉の分野で本当は支援が必要であるにもかかわらず支援に結び付いていない人を行政とつなげる「アウトリーチ」の活動を充実させることができます。その上で、現在の区役所職員と区民の数のバランスがどのようになっているか、人口千人当たりの職員数を算出いたしましたのでご覧ください。数字だけで見ると、西京区と伏見区については人口1000人に一人も区役所職員がいない一方で、東山区は1000人当たりに職員が2.73人いるということになります。区役所が必ずしも行政区の人口に応じた職員数にすべきというわけではありませんが、このままいくと行政区ごとで大きな開きができることになります。また、山間部の出張所についても一部の手続きしかできないために、結局住民の皆さまは総合庁舎に足を運んでいただいて手続きをされています。今後は出張所に行けば、パソコン端末から全ての手続きが完了する体制を整えるとともに、山間部ならではの鳥獣対策や防災などの問題に行政が今まで以上に真摯に向き合うことに重心を置いた職員配置も考える必要があります。行政区の在り方と今後のサービス提供が今までと大きく変化することを見越した職員の適切な人員配置が必要なのではないでしょうか。
そこで市長にお尋ねします。行政手続きのオンライン化についていつごろまでに何をするか今後の計画や展望についてお聞かせください。また、平成16年以降話し合いが進んでいない行政区の在り方ついても年々人口の格差は広がっていることからも見直し、抜本的な検討をする時期が来ていると考えますが市長の考えをお聞かせください。