代表質問 森かれん議員(2021年2月議会)
上京区選出の森かれんです。地域政党京都党市会議員団を代表し、大津裕太議員に引き続き質疑を行います。
まず初めに新型コロナウイルス対策の予算について2点お尋ねいたします。
1点目は重症病床数の確保に対する予算付けについてです。現在京都府下には38床の重症病床がありますが、京都府民256万人、京都市民147万人の人口規模に対し、新型コロナウイルスに感染し重症になっても小学校1クラス分程度の受け皿しかないというのは体制として極めて脆弱であります。京都府が発表している予算案において、コロナ患者を受け入れる病床の確保に358億600万円の予算措置をとるとされていますが、重症病床が満床になってしまうと、初等・中等症の患者の受け入れ態勢にも大きく影響します。現時点では、2度にわたる緊急事態宣言を始め、市民・事業者の感染拡大防止に対する不断のご努力により、感染者数はピークアウトしつつあります。けれども、感染の波はこれまでに3度あったこと、ワクチン接種による集団免疫の獲得が市民全体にいきわたるまでにはまだ時間がかかることを踏まえると、京都市民の尊い命を守るため、重症病床の拡大については市においても予算を投入して行うべきであると考えます。大阪府では重症病床の増設に向け、1床あたり5000万円、計15億円を令和3年度予算案として盛り込まれています。京都市においても府と連携し、1床あたりの金額については医師会や市内の病院のお声も取り入れ、重症病床増設に向けた助成金を出すことによって体制強化を図るべきと考えますがいかがですか。お答えください。
2点目は緊急事態宣言によって影響を受けている企業・個人事業主への支援についてです。1月8日に発令された第2回緊急事態宣言によって飲食業の方を中心に休業・時短営業にご協力いただいた事業所には補てんがありました。しかし、京都党の所属議員がそれぞれ地域を回ってお話を聞く限りでは新型コロナウイルス感染拡大によって、売上が激減している業種は飲食業やその納入業者に限りません。交通局が大幅な減収となっているように、公共交通の担い手であるタクシーや観光バス事業者は業種全体として大きく減収しています。けれども、コロナ禍が経済に及ぼす影響の特徴は、業種単位の落ち込みだけでなく業種の中でも取引先によって業績に与える影響が異なるということです。比較的堅調に業績が推移している分野でも、例えば建築業では、個人向けのリフォームや戸建て建築を行う事業者は好調でも、工場等の設備投資を中心に展開する事業者は大きく落ち込み始めています。また、運送業でもスーパーや個人向けの配達は堅調ですが、工業製品などを中心に運搬する事業者は大きな打撃を受けています。このようにコロナ禍での経済影響は細分化されており、当然それらに紐づく雇用も事業者単位で差が生まれています。
行政で全ての人を救うことは難しいかもしれません。しかし、地方自治体の役目は国の施策で補いきれない部分を少しでも埋め、一人でも多くの命とくらしを守ることです。市民から選ばれた我々の責務は、行政の目の行き届いていないところで苦しむ人々に気づき、可能な限り救える部分をキャッチアップし、その声を市政に届けることであると自負しています。だからこそ、声なき声に耳を傾けて頂きたいと思います。
そこで市長にお尋ねします。大変厳しい財政下ではありますが、コロナ禍における経済的支援は重点配分、新規事業として取り組むべき課題です。今後の経済支援に対するご見解をお聞かせください。
また、新型コロナウイルスの影響により「産後うつ」が以前の2倍以上に増えているおそれがあることが筑波大学の松島みどり准教授と助産師らが行った調査で判明しています。感染拡大防止の観点から、多くの産婦人科等では親子教室の中止や自粛、家族の出産立ち合いや面会も制限しています。そのため、コロナ禍で出産された方、また現在妊娠中の女性たちは「妊娠中の不安や悩みを共有すること」や「出産の喜びを家族と分かち合う」といった、今まで当たり前にできていたことが出来ずにいます。私も妊娠26週の妊婦であり、過去2回の出産とは状況がまるで違うことに戸惑いを感じていますが、コロナ禍で初めて妊娠された方のことを思うと、その不安は計り知れません。そのため、妊産婦の不安解消や孤立防止の取り組みについては行政のできる範囲で行っていただきたいです。例えば、区役所単位でオンラインによる「子育て相談」や「妊産婦同士の交流の場」を提供することで、妊娠・出産について相談や交流ができれば、ひと時の安らぎや安心につながると考えられます。この点に関しては要望にとどめておきますが、これまで京都市が続けてこられた初めて妊娠される方や新生児が産まれた家庭へ訪問指導などについては厳しい財政状況の中においても継続していただくようお願いいたします。
次に、選択的介護についてお尋ねします。選択的介護とは、介護が必要になっても可能な限り自立した生活を送れるように支援する「介護保険サービス」に、介護するご家族の負担を軽減するサービスなど様々な「保険外サービス」を組み合わせることで、要介護者とご家族の生活をサポートする新しい介護生活の形です。現行の介護保険でできる訪問介護は大きく分けて2つあります。「身体介護」と呼ばれる、食事や服薬、入浴、排せつなど要介護者の身体に直接触れる介助サービスと「生活援助」と呼ばれる、介護者本人のための調理や掃除、洗濯や日用品の買い物等の援助とがあります。この2つは「利用者負担1~3割」で受けることができます。「利用者家族のための洗濯や掃除、買い物」や「草むしりやペットの世話」、「趣味への同行」、「ヘルパーと一緒に食事をとる」などの行為は「保険外サービス」となり、全額利用者負担となります。介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供すること自体は介護保険制度ができた当初から一定の条件の下で認められていたものの、具体的な運用については地方自治体間で差異が見られ、そのことが事業者にとって両サービスを柔軟に組み合わせることへの障壁となっていました。平成30年9月に厚生労働省が選択的介護サービスに関する運用を定めた通達を発令したことにより事実上「選択的介護」が解禁されたため、どの自治体でも「介護保険サービスの合間もしくは連続して保険外サービスを提供する」ことが可能です。
選択的介護の具体的なイメージについては、次のパネルをご覧ください。青色は利用者負担1~3割の介護保険内のサービス、黄色は全額利用者負担となる保険外サービスです。在宅支援について、草むしりや利用者の方と食事をとるといった行為はヘルパーがいったん事務所へ戻って出直すなど、膨大な手間がかかっていましたが、現在はこのように、ヘルパーが合間に保険外サービスを行うことができるため、要介護者にとっては「生活の質の向上」、利用者家族にとっては「負担軽減」につながります。また、外出支援については「趣味への同行」という介護サービスでは提供できないことであっても金額を払えば支援ができるため、利用者の自立支援に寄与できます。介護者とその家族だけでなく、介護事業者および職員にも大きなメリットがあります。運用ルールの明確化により、合間や連続での保険外サービスが可能になったため「介護の効率化」が図られます。それ以上に、決められた一定の金額しかいただけない介護保険サービスだけでなく、全額利用者負担のサービスを上乗せすることができるため、介護事業所の経営の安定化、介護従事者の待遇改善が期待できます。次期介護報酬改定でも自立支援・重度化防止を評価する項目が盛り込まれるなど、介護を提供する方々の選択的介護に対する関心は一層高まることが予想されます。
しかし、選択的介護は全額利用者負担となる保険外サービスを組み合わせるため、活用すれば介護にかかる費用は増えます。そのことによって懸念されるのは、1つは所得によって利用できる人とそうでない人ができ格差が生じる点、2つ目は提供者と利用者との間でサービス内容や費用に対して認識のずれが生まれる可能性です。これらの課題について、先行してモデル事業を実施している豊島区でのヒアリング調査によると「財産のあるなしでサービスを利用できるか否かに支障は出ず、提案するケアマネージャーのスキルアップを図ることにより、サービス内容や費用面に関しての双方の認識のずれの解消を可能な限り行う」とされていますが、この点については引き続き注意が必要です。
京都市では介護が必要な市民に選択的介護を提供することに対して、「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせること自体は介護保険制度が開始された当初から認められており、国のルールの範囲内で個々の介護事業所等によって利用者に応じて活用するか否か決めていただく」としています。つまり、今の方針では担当するケアマネージャーや介護事業所によって選択的介護を提案するか否かが決まるため「情報の格差」に繋がり、選択的介護を知っている人とそうでない人とでは介護サービスの選択肢に差が生じることが危惧されます。市民福祉の観点から言えば、選択的介護のメリット・デメリットを理解した上で活用するかを決めるのは本来「利用者や利用者家族」であり、情報の格差は最小限にとどめるべきと考えます。
そこで市長に2点お尋ねいたします。1点目は、選択的介護について事業者の主体性にゆだねるのではなく、「知らない」ことによって市民間で受けることのできる介護サービスに差が生じないようにすべきであります。そのため、京都市として選択的介護に対する周知するため、市民向けパンフレット作成や情報提供などの取り組みを行うべきと考えますがいかがでしょうか。お答えください。2点目は選択的介護が本格的に推進されれば、実務を担うケアマネージャーは利用者と利用者家族に対して選択的介護のメリット・デメリットを説明した上で、ケアプランを作成することになります。京都市において、市内介護事業者に対し、選択的介護に対する理解を深めるため適切な説明と指導を行うべきだと考えますが、見解をおきかせください。
次に京都市役所における障害者雇用についてお尋ねいたします。令和2年京都府内の障害者雇用率達成企業の割合は53%と過去最高を更新しましたが、未だ半数近くの京都府内企業において法定雇用率が未達成であるのが実態であり、厳しい罰則のない障害者雇用促進法の在り方も含め課題があります。
京都市役所市長部局における障害者雇用率は令和2年6月時点で2.19%、教育委員会の雇用率は1.62%といずれも障害者雇用促進法における法定雇用率を下回っています。雇用義務違反というコンプライアンス上の問題もさることながら、率先垂範で積極的に障害者雇用を推進すべき地方公共団体においてこの状態は看過できません。まず市長部局における現在の法定雇用率2.5%を達成するために採用しなければならない人数は27人ですが、令和3年4月までに法定雇用率2.6%が適応されるため35人前後の採用が必要です。また、教育委員会の法定雇用率2.4%を達成するためには49人採用しなければなりません。しかし、障害のある方を対象とした新規採用試験の定員については市長部局で5名、教育委員会では若干名と未だ狭き門であり、令和2年度から身体障害者のみの採用から知的・精神障害をお持ちの方も受験可能になったこともあり9月実施の試験では倍率が12倍となっています。保健福祉局が実施している京都市役所内での職場実習から会計年度任用職員へのチャレンジ雇用に結びついた人数も平成31年度で3人とまだまだ少数であります。新規採用の定員数の拡大はもちろん、35歳までの年齢制限を相模原市のように45歳までの引き上げを行う等、抜本的見直しが不可欠です。
また、京都市の障害者雇用任免状況を見るとその多くが身体障害者の方であり、知的障害をお持ちの方の採用が令和2年6月時点において0人であることも問題です。福岡市では原則週30時間勤務し、文書整理やデータ入力に当たる知的、精神障害を持つ方々が会計年度任用職員として市役所や区役所などの60カ所以上の部署で働いておられ、スキルアップや定着フォローを推進するため、2019年2月にジョブコーチと呼ばれる職場適応援助者を採用しました。職場適応援助者とは2日間、12時間の講習を修了すれば資格認定がもらえる障害者職業生活相談員とは違い、高度な研修を経て社会福祉法人やハローワークなどで就労支援業務の経験を積んでいる方です。職場適応援助者が障害のある職員が働く部署を巡回し、作業の進め方について本人に助言したり、職場の上司や同僚に対して接し方のポイントを伝えたりと職場環境の改善に専門的に当たってもらうことにより、福岡市は「障害職員の人数だけでなく、長く働けるという質の面も向上が図られる」としており、今後のロールモデルとして期待されています。
市長にお尋ねします。1点目は、京都市障害者活躍推進計画における障害者雇用の目標数値が「令和5年6月1日時点の障害者雇用率が法定雇用率を上回ること」となっておりますが、これでは目標が低すぎます。年齢制限の緩和を行った上で追加の新規採用を実施、会計年度任用職員採用への枠の大幅な拡充などをすぐに行うことにより、遅くとも令和3年度中に市長部局、教育委員会ともに法定雇用率を達成すべきだと考えますがいかがですか。お答えください。2点目は、京都市においてもジョブコーチを職員として採用するなど、主に知的・精神障害をお持ちの方へより専門的見地から定着フォローを行い、京都市内の企業に障害者雇用の範を示すべきと考えますが見解をお聞かせください。