代表質問 大津裕太議員(2022年2月議会)
中京区選出の大津裕太です。地域政党京都党市会議員団を代表して令和4年度京都市予算案について質疑します。
冒頭に、この間、オミクロン株の流行により、感染したり、濃厚接触者になったりする方が、爆発的に増加しました。保育園や幼稚園の休園、学校の学級閉鎖も相次ぎ、また、職場では人員が足りず業務がまわらない、飲食店等は蔓延防止等重点措置の再発令で経済的な痛手を受けるなど、多くの影響がでております。罹患された皆様にお見舞い申し上げるとともに、影響を受けた全ての皆様のご苦労に心を痛めております。また、保健所をはじめ、エッセンシャルワーカーに皆様のご尽力に感謝申し上げます。1日も早いパンデミックの収束を祈りつつ、行政として京都市にもっとできることがないか、京都党としても考え、当局にもお願いして参りたいと思います。
【本市の人口動態とその課題について】
最初に、本市の人口動態とその対策についてです。
日本の人口は、総務省統計局の発表によると2010年に約1億2800万人でピークとなった後、少子化の影響で減少局面に入りました。現在は、1億2500万人を少し上回る水準ですが、2030年には1億2000万人を下回り、2050年頃には1億人を下回る見込みとなっています。
本市の状況は京プラン2025によると、2005年から2015年にかけて約147.5万人で10年間横ばいだったのをピークに減少局面に入り、2030年に142.3万人、2045年に129.7万人と推計されています。
さて、ここからが本題です。多くの市民の皆様の認識は、京都市の人口は横ばいで、微減し始めたという認識ではないでしょうか。しかし、実は、統計上の最新である2020年の数字では、京都市は、全国の約1700の市町村の中で最も人口が減った自治体です。
よく目にする人口減少率では、京都市より減少率が高い自治体は多くありますが、絶対数である人口減少数では本市が全国で最も多いのです。その数は8982人で、自然減が5795人、社会減が3187人となっています。
自然増減数は、出生数と死亡数により決まりますが、本市は高齢化率が政令指定都市の中でも高く死亡者数が多くなる傾向があるとともに、出生率は全国平均1.34の中、本市は1.21と全国最低水準であり出生数も少なく、構造的に他都市より自然減が多くなる俎上があります。2020年は自然減5795人でしたが、今後も少しずつ増加していくものと想定されます。
社会増減数は、転入数と転出数により決まります。2020年は、コロナ禍の影響で、大学の授業がオンライン中心になったことなどにより、本来なら市内に転入してくる大学生が引っ越しをせず実家などから授業を受けるなどの特殊事情がありましたので、2020年の単年度の数字だけで判断できない側面もあります。しかし、大学等の教育機関から卒業した若者達が就職をきっかけに他都市に出て行ってしまっていること、本市の住宅価格を中心とした高い物価水準などを原因に20代後半から30代の世帯が、滋賀県や京都府下の自治体に出て行ってしまっていることは、京都市の社会減の大きな要因なのはご存知の通りです。
20代、30代の流出は、今後の出生数の減少に更に拍車を掛けることとなりますので、本市の人口動態は大変厳しい状況にあります。
昨年の2月市会の京プラン2025の審議において、我が会派から人口減少に対する見解を質問しました。しかし、その答弁は大変頼りなく、具体的な数値目標もなく、人口減少の本市への影響も曖昧で、「人口減少を少しでも抑制する」ということに終始するものでした。
また、本市が示している推計では2020年の人口が147.2万人とされていましたが、現実は145.8万人とすでに下振れし始めています。今後の推計も、自然減の数や今後さらに少子高齢化が進むことを勘案すると、本市予測を更に大きく下振れすることが予想されます。
そこで市長にお伺いします。本市の人口減少に対する認識・向き合い方は大変甘いように感じますが、全国で最も人口減少数が多いという事実をどのように捉えておられるか、本市の人口推計より現実が大きく下振れする可能性が極めて高いことをどのように捉えておられるかをお聞かせください。また、経営再建の真っただ中の市営地下鉄や市バス、そして、財政再建のために必須の歳入増を計画する「都市の成長戦略」を始め本市の多くの計画は、人口減少による影響が大変大きいと考えますが、人口減少や人口推計の下振れを織り込んだ計画となっているでしょうか。お聞かせ下さい。
その上で、ご提案をしたいと思います。
自然減に関しては、長期的に解決していく必要はあるものの、高齢化比率の高さや出生率の低さを解決することは一朝一夕でできることではなく、世界的に見てもこの問題を解決できた事例はほとんど見当たりません。特に出生率の向上は不断の努力をしていく必要がありますが、差し当たって目の前の対策としては、社会減を食い止め、社会増にもっていく政策をしていく必要があります。
京都市の目下の課題は、住宅価格をはじめとした様々な環境を背景に本市を離れていく若者世代、子育て世代の流出を防ぐとともに、逆に流入する状況へと持っていかなければいけません。
本市でも全体としては人口流出傾向にありますが、伏見区の羽束師や久我地域などは、現在も人口流入が多いですし、西京区の桂川地域も同様に大変人口が増えています。少し遡れば、御所南学区も小中一貫教育のモデル校の創設により子育て世代が大変流入した事例です。
これらを考えるに、本市が戦略としてターゲットすべきは、交通利便性が高いにも関わらず住宅価格、土地価格が比較的安価なエリアの開発ではないでしょうか。具体的には、地下鉄東西線沿線の山科区・伏見区です。
例えば、山科区は山科区基本計画にも課題としてあがっていますが、まちの実態とイメージのギャップが指摘されています。ひと昔前のイメージが定着していますが、現実は、山科区は犯罪件数も他の区より少ない傾向にあり、イメージの払しょく次第で大きなポテンシャルを抱えています。他都市で見ても、一番大きな事例でいえば川崎市、関西でいうと尼崎市の一部エリアなどが同様の課題を克服して、子育て世代から人気の街へと変貌を遂げています。
また、東西線沿線のこれらの地域は、立地的に見ても、景観による規制などももう少し柔軟にする余地があるのではないでしょうか。
東西線沿線の山科区・伏見区エリアの、駅前のマンション等の高さ規制の緩和や、小中学校や保育施設、教育施設への注力、広報戦略による街のリブランディングをしっかり行えば、滋賀県や京都府下への人口流出は止められると考えますが、本市の見解をお聞かせ下さい。
ここまでの答弁を求めます。
【財政危機を脱却するまでの行財政改革について】
次に、本市の財政と行財政改革計画に関して質疑します。
令和4年度予算は、行財政改革計画の実効性を担保ための試金石として大変重要な予算編成です。その意味では、社会福祉関連経費をはじめとした経常経費も、公共工事などの投資的経費も定めた歳出上限の範囲内で抑え、69億円の余剰を生み出せたことは大変評価しております。長らく、財政の問題を指摘し、何度も繰り返し提言しては、門川市長にそれは縮み志向だと否定されてきた京都党としては、なぜこれがもっと早くからできなかったのか、もっと早く取り組めば、ここまで市民生活に影響が出るような急激な市民サービスカットをしなくても済んだのではないか、という忸怩たる思いがあります。
また、進行中の令和3年度も、想定よりコロナ禍により税収への影響が少なかったことなどを背景に、過去に行った公債償還基金からの借入を187億円返済するなど、単発的なこととは言え、財政の改善が見られたことも好材料です。
しかし、これらの好材料をもとに、「財政危機克服の見通しがたった」という門川市長の発言はいささか楽観的過ぎ、また、市民への誤ったメッセージになりかねません。
門川市長もお忘れではないと思いますが、平成28年度から令和2年度までの京プラン第2ステージでは、実質の赤字である特別の財源対策を毎年概ね100億円に抑え、令和2年度には脱却するという計画を失敗しております。振り返れば、京プラン第2ステージ期間も、中期財政見通しの下方修正を続け、何度、計画失敗の可能性を指摘しても、後半年度で挽回するなどの根拠のない発言で誤魔化してきた経緯があります。見通しの甘さも、計画失敗の大きな要因だったにも関わらず、反省は活かせているのでしょうか。
令和4年度予算の特別の財源対策は、依然と117億円もの巨額を計上しており、前述の前プラン時に掲げていた概ね100億円を大きくオーバーしております。この間の行財政改革は、総論としては一定評価しておりますが、数字だけをみれば、コロナ禍前の水準に戻っただけと言えます。市長からすると、基金枯渇がすぐに起きる事態を脱却したと思っておられるかもしれませんが、それは最低限のことで、本市の収支バランスが回復する具体的道筋がついてはじめて「見通しがたった」と言えるのではないでしょうか。
この状態で「見通しがたった」などという楽観的な発言は、改革を先導するリーダーとしては、極めて不適切な発言です。「見通しが立った」ならこれ以上の市民サービスの削減は必要ないと受け取る市民の方が出てくるのは当然です。今後も様々な市民サービスの見直しをしていかなければいけないにも関わらず、何故「見通しがたった」のに更なる市民サービスの見直しがされるのだと不信感を与えかねません。ご自身の発言に関する認識を改めて市長にお伺いいたします。
また、財政危機克服の今後の見通しが示されました。この見通しによると、令和15年度頃までの歳出を令和3年度水準で維持し続けるという点と、都市の成長戦略による担税力強化による100億円の財源捻出が前提となっています。
歳出を横ばいで維持するという考え方は賛成ですし、大変良い方向性だと思います。しかし、一方で、社会福祉経費が増え続ける中で、歳出を横ばいにするためには、どの程度の歳出削減が必要なのかが示されておりません。これでは、本当にできるのか全く判断ができません。
そして、担税力強化による100億円の財源捻出も考え方は大賛成です。しかし、税収ベースで400億円もの増収は、コロナ禍前の過去10年の増収が約150億円だったことを考えると生半可なことではありません。9月市会でも指摘した通り、この金額の根拠は、財源不足額から逆算しただけと総合企画局が公式に答弁するお粗末なものです。人口問題でも指摘しましたが、人口が大きく減少し、特に現役世代がどんどん少なくなる社会背景の中で、本当達成できるのでしょうか。また、市長も常々言っておられるように、地方交付税は削減が続くと予想されますが、その点は一切触れられていません。
京プランの第2ステージで財政の建て直しに失敗した際に、門川市長に失敗の理由を質問したところ、増え続ける社会福祉経費と削減され続ける地方交付税をあげ、不測の事態だったという答弁でした。今回の計画も全く同じ轍を踏んでないでしょうか。前回の失敗の反省がどう活かされているか改めて説明を求めます。
また、歳出横ばいのために必要な歳出削減額と、地方交付税の削減などの歳入減をしっかり数字で記載した令和15年までの財政見通しをご提示いただくように求めます。いかがでしょうか?
以上で、私の代表質疑を終わります。ご清聴誠にありがとうございました。