市会報告~平成25年2月定例会~
平成25年度予算案を審議する今議会では、実質的には24年度を348億円上回る7,365億円(一般会計予算)となりました。主な議案には保育料金・学童料金の値上げや、水道料金値上げといった市民への負担増となる案件、その他にも土地開発公社の巨額損失や職員厚生会の補助金復活に対する是非についても議論しました。
今回は131億円の財源不足の中、財政対策の禁じ手と言われてきた公債償還基金の取り崩しが行われ、相次ぐ料金値上げで市民負担も増している一方で、まだまだ財政再建に向けての行政改革を徹底しきれていない部分も目立ちました。
いうなれば家計の中でローン返済の為によけて置いたお金を使い、返済金については返済期限が迫ってきたときに考えるという、究極の問題先送りなのです。
今年は、政府より地方公務員の給与の引き下げが自治体に要請されています。正確にはそれを前提に約32億円の地方交付税が減額されます。しかし、これについては引き下げず、不足分は京都市が持ち出して給与を維持すると言っています。過去最大級となる約93億円の公債償還基金を取り崩し、将来にツケを先送りした上で、公共投資を増加させ、市民には水道料金、保育料などありとあらゆる値上げを実施し、自分たちの給与水準は維持します。
京都党は、京都市の発展的な将来を目指すうえで、今回の巨額ともいえる財源不足を生み出した現状、またそれを先送りする本年度予算を看過することは出来ないというスタンスで、中島議員の代表質問を皮切りに、予算委員会でも徹底的に議論を重ねてきましたが、納得のいく回答もなく、やむなく一般予算については反対することと致しました。
予算反対における詳細は以下の反対討論文章をご参照ください。
また、これまで予算を否決してきたのは、京都市会の歴史の中で共産党のみだけで、共産党以外が反対するということは異例の事態のようで、方々から「野党宣言か?」「与党離脱か」「いや元々与党じゃないからこれでいいのでは?」など様々な憶測が飛び交っております。しかし、私たちは改めて与党、野党という概念ではなく議員本来の役割である「行政のチェック機能」を果たすべきだと考えます。この点については、以前から申し上げていることでありますが、改めて与党野党についての考え方をまとめましたので併せてご覧いただければと存じます。(脱・与野党宣言参照)
引き続き私たちは是々非々のスタンスでしっかり議論を進めて参ります。
【反対討論文(全文)】
地域政党京都党は、議第一号平成25年度京都市一般会計予算および議第16号平成25年度京都市基金特別会計予算について反対の意を表明しておりますので、その理由を申し述べます。
本市財政は厳しい社会情勢と社会福祉費の増大により毎年厳しい財政運営が迫られております中で、本年度は昨年度を上回る積極予算になっております。結果、131億円の財源不足が生じ、特別の財源措置を強いられております。問題はそこにあります。
本年度は京都会館の建て替え、動物園の改修、消防指令センターの再構築、ハンナリーズアリーナの改修と公共投資が集中する一年となっております。しかしながら、25年度予算で公共投資が膨れ上がる事は何年も前から分かっていたはずです。分かっていたにもかかわらず、それに対する備えを怠ってきたことが、今日のこの状況を生み出しています。
本来、こうした年度ごとの投資枠の増減、また税収の増減に備え、公共投資が少ない年はその分を積み立て、多い年に積み立てから出金し、平準化をはからなければなりません。なぜ、それが出来ないのでしょうか。
そうです。その役割を担うべき財政調整基金を緊急回避という名の下、毎年切りくずし、ほとんど使い切ってしまったからであります。弾力性のある財政運営をすすめていく為の重要な装置が使えなくなり、融通のきかない予算編成を迫られているのです。
まさにこの数年間先のことを考えず目先の予算編成の為に切りくずし、今そのしわよせを我々が食っているとも言えるのです。私達はその教訓を生かさなければならないにも関わらず、公債償還基金の切りくずしという拍車をかけるツケの先送りを行おうとしているのです。
公債償還基金は予算上は1205億となっておりますが、一般会計への貸付金を含んだ金額であり、実際一般会計から基金に対して返還できる目処は全くついておりません。つまり実質917億しかない訳です。
本年度のペースで公債償還基金を切りくずしていくと、この917億しかない基金は10年後底をつきることになります。底をつきれば基金から90億引き出す様なマジックも出来なくなります。その時は、義務的経費を強制的に削ってでも予算編成をしなければならなくなる訳であります。今よりはるかに厳しい予算編成をしいられる事は明白であります。
ここまでなし崩し的に、場当たり的に基金を切りくずし続けてきた結果、我々は今、苦しめられています。その大変さ、危険性を理解した我々が、さらに問題を将来に先送る事を我々は容認してはなりません。
今般の予算委員会でも審議されました土地開発公社の解体についても同じことが言えます。バブル崩壊による地価の大幅下落や不況による大幅な税収減など種々の外的要因が大きかったとは言え、これまでの市の失政により91億円の実損が発生致しました。既に京都市が公社から買い戻した評価損が一体いくらになるのか、未だに説明もされておりません。その説明責任をしっかり果たして頂き、こられについてもしっかりと過去の過ちを整理しなければなりません。
それは、これまでの負の遺産そのものでありますが、これすらも目の前で解決をはからないばかりか、返済による単年度の負担が増える事を懸念し10年で清算できる損失をさらに先のばしにし、15年での清算を決定致しました。これについては、自民党、民主党を始め各党からも早期解散処理の声が出ております。なぜなら、負担の先送り以外の何物でもないからであります。
10年後、納税者となる市民に我々は何と説明するのでありましょうか。今年度予算と全く同じ構図なのであります。これらを見るにつけ、安易に先送りにする市財政に強い恐怖感と激しい憤りを感じています。
今の京都市に様々な機能強化をはかる余裕が一体どこにあるのでしょうか。京都党では以前、「イベント式典の全面見直し」を実施致しました。政策効果の薄い事業が沢山ありました。今、そんなお祭り的予算を捻出する余力がどこにあるのでしょうか。
あえて自戒を込めて申し上げますが、市長・議員・業界など方々からの頼まれ予算をつける余裕がどこにあるのでしょうか。もはや市財政は危機的状況です。市民の生命と財産、暮らしを守ることで手一杯のはずなのです。
恒常的に行ってきた職員削減や給与カットですが、本当に給与を削ってでも将来の貴重な税金を使ってでも本当にやらねばならない事業なのか、ひとつひとつ改めて見直す必要があるのではないでしょうか。
市民の皆様にも目を向けねばなりません。決算が黒字です、借金は減り続けていると喧伝しておられますが、事態は刻一刻と悪化しております。
確かに京都市に返済義務のある臨時財政対策債をのぞく借金は減っています。しかし、臨時財政対策債を含めた借金は年々増加の一途をたどり、2兆1800億円に上ります。臨財債も、原則論は国が支払うという事になっておりますが、それを信じている者はもはや少数、自らの借金ととらえておく事が肝要なのは言うまでもありません。
少子化対策は、門川マニフェストの目玉政策であるにもかかわらず、その中核である保育園の保育料ですら値上げせねばサービスを維持できないところまできているのです。それ程切迫した事態である事をしっかり市民に伝えなければなりません。
そもそも我々は自主財源は2500億しか持っていません。国からの5000億はもとを正せば税金ですが、このお金は本来ないお金です。三割自治と言われてきたゆえんです。2500億の税収しかない京都市が7500億のサービスを提供し続けていることを市民も議会も市役所も改めて考えねばなりません。その原点を忘れず、入るを測り出るを制さねばなりません。
公債償還基金切りくずしを禁じ手と断言されつつも、随分当たり前のように予算編成で聞くようになりました。ここ数年、毎年のように予算書に登場いたします。これ以上認めればもはやなしくずしになりますことは明白です。
平成13年、京都市は財政非常事態を宣言しました。当初は大変な危機感を以ってまさに再建に取り組んでおられました。非常事態を何が何でも脱却するのだという気迫が当局にはございました。12年がたった今、そんな気風は忘れらたかの如く、とにかく現年度の予算を組みきることに終始しております。
非常事態はあくまで非常事態でなければなりません。同様に公債償還基金の切り崩しは、「禁じ手」という言葉の通り禁じ手でなければなりません。同じ轍を踏んではなりません。27年までこの手法を繰り返し予算編成をするということですが、私たちはそれを絶対に認めてはならないのです。
今年は八重の桜観光PR事業に500万円の予算が計上されておりますが、会津藩流に言えば、公債償還基金の切り崩しこそ「ならぬものはならぬのです」。
一つの現象は見る角度によって見えてくる見え方は違います。
今年度の予算は今を生きる、今日を生きる人にとっては正しい選択なのかも知れません。善といえるかもしれません。
しかし、明日を生きる人にとって、将来にとっては誤った選択であり、悪なのです。
我々京都党は将来にツケを先送りにしない政治を掲げ、市民の皆様に送り出して頂きました。よって、財源の目処も立たない中で、施策の充実を図れという声やとにかく値上げ反対という声とは全く異なった考え方に立脚しております。これまでから、入るを測りて出るを制すの精神に立って予算と向き合って参りました。起債を拡大させず、基金を切りくずさず、財政規律をしっかり守り、将来に責任の持てる政治を行うべきだと信じています。
私達は常に前を向いて歩いていかねばなりません。未来の為になる事に全力をつくさねばなりません。
かつて景観条例が上程された時、市会でも賛否入り乱れ、喧々諤々の議論がありました。土地の所有者の財産権の侵害だといった声などをはじめ、随分不利益をこうむる人が出るとのことでありましたが、最終的には「百年後の、未来の京都の為に今はがまんして頂く」という決断を我々は下したのです。今よりも明日を政治が選択した瞬間でした。京都市会は常に京都の未来を憂い、子々孫々に至るまで京都が京都であり続ける為に、持続可能な都市の発展の為に尽力してきたと確信をしております。京都市会は公債償還基金を切り崩すという危険性の意味を十二分に理解しています。だからこそ、23年度の補正予算では議員報酬の削減を継続し、その削減で発生した余剰金を公債償還基金の切り崩し額の減額に充てたのであります。議員報酬を削減してでも切り崩しを回避すべしというものなのであります。
いかなる理由があろうとも、今我々が負担しなければならない予算を将来の京都市民におしつけ負担させるのは誤りです。
職員の福利厚生に資する職員厚生会へは今年度より凍結されていた事業主負担が再開されます。一般財団法人化に伴い、これまで切り崩してきた保有財産を事業用途に切り崩せないとの理由でありますが、そもそもこの案件は、本市の財政事情等を踏まえ平成21年度より凍結に踏み切ったものであります。したがって財政事業が好転しない中、再開させることはおろか、公債償還基金を切り崩してまで実施しなければならない理由はありません。むしろ、真っ先に凍結継続を申し出てしかるべきものであります。
今年度昨年より30億円公債償還基金の切りくずし額が増額されておりますが、この30億は、国が地方公務員給与の引き下げを理由に強行的に地方交付税を減額してきた結果不足が生じたものであります。職員給与引き下げに関する事項は一定理解できなくもないですが、それでもなお、今の職員の給与支払いを将来の予算で支払うことは正しい選択ではないのです。それを回避したいのならば、改めて更なる歳出抑制を図る他ないのです。
これらの理由から、京都市民の一人として誇りを持ってこの未来に対して責任の持てない、将来に対して説明のつかない本予算を否決致します。同僚先輩諸兄の賢明なご判断を切に期待致しまして、反対討論と致します。ご清聴ありがとうございました。
【脱・与野党宣言】
政治の世界には、与党と野党という概念があります。
国会では、国会議員から行政の長(内閣総理大臣)が任命され、議員が行政運営を行う為、与党と野党に別れて論陣を張ります。そして、同じような構図が、二元代表制の地方議会でも繰り広げられます。しかし、地方議会での与野党という概念は不明確です。
市長派を与党、反市長派を野党と分けるのですが、明確な定義はありません。
市長を選挙で応援するから与党なのでしょうか。
市長提案の議案に全て賛成するから与党なのでしょうか。
市長提案の予算に賛成するから与党なのでしょうか。
全ての議案に賛成することが与党であるならば、全ての予算案に賛成することが与党であるならば、それは、与党=市長の追認機関としか言えません。
しかし、本来の二元代表制はそのような体制を意味するものではないはずです。
正しいときは賛成し、道から外れたときは反対すれば良いのです。
したがって、与党は賛成、野党は反対というような単純な構図で政治をするべきではありません。政策判断をするのに、「我々は与党だから」「我々は野党だから」という不要なフィルターを通して議案を見るべきではありません。
地方議会に与党や野党という概念で論じる時代は終わりました。
かねてより、京都党はある方面からは与党、ある方面からは野党と揶揄されてきました。私たちは与党でも野党でもありません。
それ以上に与党・野党の概念を捨てるべきだと考えています。
私たち京都党は、ここに、与党でも野党でもない、是々非々の政策集団であることを表明します。
平成25年3月22日
地域政党京都党
代表 村山祥栄